一般貨物実務ノート一般貨物自動車運送事業の許可と実務

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許可の要件は、
法律に4つ、公示に12項目。

「5つの要件」と紹介されることが多いのは、このうち場所と車と人にあたる5項目です。 ただし審査はそこで終わりません。法律の側は抽象的な基準を4つ置くだけで、 面積・距離・台数といった数字はすべて公示の側に書かれています。

このページは、その2つを並べて、どの数字がどこに書いてあるのかを確かめられるようにしたものです。

出典:貨物自動車運送事業法 第6条/公示「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可及び事業計画変更認可申請等の処理について」(平成15年2月14日 国自貨第77号。以下このページで「公示」)

まず、法律のほうを読む

貨物自動車運送事業法 第6条は「許可の基準」として4つを挙げています。数字は1つも出てきません。

基準(第6条)
一号その事業の計画が過労運転の防止、事業用自動車の安全性その他輸送の安全を確保するため適切なものであること。
二号前号に掲げるもののほか、事業用自動車の数、自動車車庫の規模その他の国土交通省令で定める事項に関し、その事業を継続して遂行するために適切な計画を有するものであること。
三号その事業を自ら適確に、かつ、継続して遂行するに足る経済的基礎及びその他の能力を有するものであること。
四号特別積合せ貨物運送に係るものにあっては、積卸施設の保有及び管理、乗務の管理、紛失等の事故の防止その他特に必要となる事項に関し適切な計画を有するものであること。

出典:貨物自動車運送事業法 第6条(e-Gov 法令検索の条文で確認)。四号は特別積合せ貨物運送だけの基準なので、多くの申請では一号から三号を見ることになります。

「5両」も「50cm」も「2.5㎡」も、法律には書かれていません。 第6条第二号が国土交通省令へ、そして実務の判断基準は公示へと降りていきます。 調べものが噛み合わないときは、たいてい法律を見ているのか公示を見ているのかがずれています

公示は12項目を並べています

「5つの要件」は、このうち上の5つ ── 場所と車と人にあたる部分です。太字がそれにあたります。

番号項目このサイトでの扱い
(1)営業所下で扱います
(2)最低車両台数下で扱います
(3)事業用自動車下で扱います
(4)車庫下で扱います
(5)休憩・睡眠施設下で扱います
(6)運行管理体制運行管理者のページ
(7)点検及び整備管理体制整備管理者の項
(8)資金計画準備中
(9)法令遵守このページの最後で触れます
(10)損害賠償能力このページの最後で触れます
(11)許可に付す条件準備中
(12)欠格事由法第5条。このページの最後で触れます

出典:公示 1.(1)〜(12)。「要件は5つ」で数えている限り、資金計画も法令遵守も視野に入りません。審査はこの12項目で行われます。

(1) 営業所 ── 数字ではなく「書面で示せるか」

公示が求めているのは4つです。面積の下限は示されていません。

01

使用権原を有すること

自己所有なら登記、賃貸なら賃貸借契約。契約期間の残りや、事業用に使える契約かどうかまで見られます。

02

関係法令に抵触しないこと

都市計画法等。市街化調整区域や、用途地域によっては事務所として使えません。物件を決める前に確かめる箇所です。

03

規模が適切であること

公示は「適切」としか書いていません。数字ではなく、計画する事業に対して釣り合っているかどうかです。

04

事業遂行上適切であること

必要な備品を備えていることなど。「登記だけあって実体がない」状態を排除する条件です。

出典:公示 1.(1)。

(2) 最低車両台数 ── 5両。ここは数字が出ます

公示は「営業所毎に配置する事業用自動車の数は種別ごとに5両以上とすること」としています。

営業所ごとに5両

会社全体で5両ではありません。営業所ごとです。2つ目の営業所を作るなら、そこにも5両が要ります。

けん引車と被けん引車で「1両」

トラクタ1両とトレーラ1両の組み合わせは、あわせて1両と数えます。2両ではありません。

拘束されないもの

霊きゅう運送、一般廃棄物の運送、および島しょ地域の事業は、この5両に拘束されないとされています。

5両は、そのまま整備管理者の選任義務とつながります。 乗車定員10人以下の自動車運送事業用の自動車は、5両以上で整備管理者の選任が必要です(道路運送車両法施行規則 第31条の3)。 許可の要件が原則5両ですから、最初から選任が要るということになります。

出典:公示 1.(2)/道路運送車両法施行規則 第31条の3。

(3) 事業用自動車 ── 大きさと構造、そして使用権原

公示は2つだけを求めています。台数と違って、車種の指定はありません。

貨物に適切な大きさ・構造であること

計画する輸送の中身と、車が釣り合っていること。「何を運ぶか」を先に決めていないと書けません。

使用権原を有すること

購入・リース・割賦のいずれでも構いませんが、申請の時点で権原を示せる必要があります。所要資金の見積りにも直結します。

出典:公示 1.(3)。

(4) 車庫 ── 数字がいちばん多い項目

公示が求めているのは7つ。そして営業所からの距離だけは、地方運輸局ごとに別の公示で決まります

営業所・車庫・休憩睡眠施設の位置関係 公示は、車庫も休憩睡眠施設も原則として営業所に併設することを求めています。併設できないときは、車庫と営業所の距離が地方運輸局の公示で決まる範囲に収まっていることと、点呼が確実に実施される体制が要ります。 原則 営業所 車庫(併設) 休憩・睡眠施設(併設) 併設できないとき 営業所 車庫 直線距離 地方運輸局の公示で決まります (局・地域ごとに違います) + 点呼が確実に実施される体制

車庫は原則として営業所に併設。併設できない場合に、はじめて距離の制限が出てきます。

公示が求めていること内容
併設原則として営業所に併設するものであること
間隔車両と車庫の境界、および車両相互間の間隔が 50cm以上 確保されていること
収容計画車両数のすべてを収容できるものであること
区画他の用途に使用される部分と明確に区画されていること
使用権原使用権原を有するものであること
関係法令都市計画法等関係法令の規定に抵触しないこと
前面道路原則として幅員証明書により、車両制限令に適合すること

出典:公示 1.(4)。前面道路の幅員は、自分の土地の話ではありません。道路の側の条件なので、借りる前に確かめないと動かせません。

営業所からの距離は、局によって違います

ここは全国共通ではありません。同じ「一般貨物の車庫」でも、どの運輸局の管内かで基準が変わります。

局・地域営業所からの距離
関東運輸局:東京都特別区・横浜市・川崎市20km以内
関東運輸局:その他の地域10km以内
北陸信越運輸局:新潟県・長野県内5km以内(直線)
北陸信越運輸局:富山県・石川県内10km以内(直線)

出典:関東運輸局「一般貨物自動車運送事業(特別積合せ貨物運送を除く)経営許可申請書作成の手引」(平成27年6月1日)/北陸信越運輸局の許可基準の資料。 上の4行は例です。ほかの局の値は確認していません。申請する営業所の管轄局の公示で必ず確かめてください。
関東の手引は2015年のもので、令和元年11月1日の許可基準の見直しより前の版です。関東運輸局はいまもこれを掲載していますが、 お金のページで触れているとおり、同じ手引の中には現行と食い違う数字もあります。距離は必ず最新の公示で確かめてください。

1両あたりの必要面積を目安として示している局もあります。 北陸信越運輸局の資料では、最大積載量に応じて 7.5トン超は38㎡/2.0〜7.5トンは28㎡/2.0トンロングは20㎡/2.0トン以下は15㎡ とされています(1両あたり)。

これも全国共通の数字ではありません。公示が全国共通で求めているのは「50cm以上の間隔」と「全車を収容できること」で、 面積の目安は局の資料の側にあります。

(5) 休憩・睡眠施設 ── 睡眠を与えるなら1人2.5㎡

条件は4つ。面積の数字が出てくるのは「睡眠を与える必要がある場合」だけです。

原則として併設

営業所または車庫に併設するものであること。車庫と同じく、離れる場合には別の説明が要ります。

乗務員が有効に利用できる適切な施設

「置いてある」ではなく「使える」こと。休憩と睡眠は別の話として書き分けられています。

睡眠を与えるなら1人2.5㎡以上

公示の文言は「少なくとも同時睡眠者1人当たり2.5㎡以上の広さを有するもの」。同時に寝る人数で数えます。

使用権原・関係法令

営業所や車庫と同じく、権原と都市計画法等への適合が要ります。

出典:公示 1.(5)。睡眠を与える必要がない運行計画なら、2.5㎡の基準はかかりません。裏を返せば、運行計画のほうが先に決まっていないと、この施設は設計できません。

(6) 人 ── 運転者・運行管理者・整備管理者

公示の(6)運行管理体制は、要件のなかでいちばん条件の数が多い項目です。

01

適切な員数の運転者を常に確保し得ること

車両数とその他の事業計画に応じた人数。「常に確保し得る」ので、申請時に頭数が揃っているかだけの話ではありません。

02

常勤の運行管理者を確保する管理計画

選任を義務づけられる員数の常勤の運行管理者。人数は車両数から機械的に決まります。

何人要るのか計算する →

03

勤務割・乗務割が告示に適合すること

平成13年8月20日 国土交通省告示第1365号。拘束時間・休息期間の基準で、人員計画はここから逆算します。

04

指揮命令系統が明確であること

運行管理の担当役員など。誰が責任者かが書面で分かることを求めています。

05

点呼が確実に実施される体制

営業所と車庫が離れている場合、常時密接な連絡をとれる体制とあわせて求められます。車庫の距離の話は、ここに跳ね返ります。

06

事故防止の教育・指導、報告の体制

事故の処理と、自動車事故報告規則に基づく報告の体制まで含みます。危険物を運ぶなら、消防法等の取扱資格者も必要です。

出典:公示 1.(6)。運転者は貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条第2項に違反する者でないことも求められます。

残りの項目 ── ここで落ちることがあります

場所と車と人が揃っても、審査はまだ続きます。

(8)

資金計画

所要資金の見積りが適切で、調達に十分な裏付けがあり、自己資金が所要資金に相当する金額以上であること。そして申請日以降、許可日までの間、常時確保されていること

⚠ 内訳の項目と月数は局の手引の側にあります。本サイトの所要資金のページは準備中です。

(9)

法令遵守

申請者と役員が、貨物自動車運送事業法その他の法令の知識を有し、遵守すること。申請日前6か月間(悪質な違反は1年間)の処分歴が見られます。

⚠ この確認のために各地方運輸局が法令試験を実施しています。出題数・合格基準・受験できる回数は局の公示で定められていますが、本サイトはまだ一次資料に当たれていないため、数字を書いていません。

(10)

損害賠償能力

自賠責保険(共済)に加入する計画のほか、任意保険の締結等により十分な損害賠償能力を有すること。危険物を輸送するなら、それに対応する保険も含みます。

(12)

欠格事由(法第5条)

1年以上の拘禁刑から5年、許可の取消しから5年など。法人の場合、取消しに係る聴聞の通知が到達した日の前60日以内に役員だった人も含みます。

密接な関係を有する者(親会社等)の取消し歴も欠格事由です。自社だけの話ではありません。

出典:公示 1.(8)〜(12)/貨物自動車運送事業法 第5条。

このページで確かめていないこと

出典に当たれた範囲と、当たれていない範囲を分けて書いておきます。

項目状態
法第5条・第6条の条文e-Gov 法令検索の条文で確認しました
公示の12項目と、5両・50cm・2.5㎡公示の本文で確認しました
車庫と営業所の距離関東・北陸信越の2局ぶんだけです。他の局は確認していません
1両あたりの車庫面積北陸信越の資料の数字です。全国共通ではありません
法令試験の出題数・合格基準・受験回数一次資料に当たれていないため、書いていません
所要資金の内訳と月数準備中です

数字は、申請する営業所を管轄する運輸支局・地方運輸局の公示で必ず確かめてください。個別の申請の可否は運輸支局の判断によります。

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要件の確かめ方を、順番どおりに

『一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)が自分でわかる本』では、第1章から第3章で場所・車・人・お金の要件を、 第4章以降で申請書類の作り方を扱っています。物件を決める前に確かめる箇所を先に置いた構成です。チェックリストは136項目です。

著者:貨物運送手続き実務ノート ── 当サイトの運営者です。サイトと本は同じ人が書いています。

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