一般貨物実務ノート一般貨物自動車運送事業の許可と実務

入口

お金 ── 使う額ではなく、
「申請の間ずっと見せておく額」です。

所要資金は、事業を始めるのにかかる費用の見積りです。 ただし審査で見られるのは「その額を用意できるか」ではなく、 その額以上の自己資金が、申請日から許可日までのあいだ一度も下回らずに置いてあるかです。

だから「開業資金がいくら要るか」という問いと、この要件は別のものです。

出典:公示「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可及び事業計画変更認可申請等の処理について」1.(8)資金計画/登録免許税法 別表第一/北陸信越運輸局の手引(令和5年4月3日改訂)

全国共通で決まっているのは、この3つだけです

公示の「資金計画」の項は短く、金額も月数も出てきません。求めているのは次の3つです。

01

見積りが適切であること

所要資金の見積りが適切なものであること。何をいくらで見積もったかを書面で示します。

02

調達に十分な裏付けがあること

「用意できる予定」ではなく、裏付けのある調達計画であること。

03

自己資金が所要資金に相当する金額以上

そして申請日以降、許可日までの間、常時確保されていること。ここが実務でいちばん効きます。

自己資金は、申請日から許可日までずっと所要資金以上でなければならない 公示は、自己資金が所要資金に相当する金額以上であることと、それが申請日以降許可日までの間、常時確保されていることの両方を求めています。途中で一度でも下回ると、その時点で基準を満たしません。 申請日 許可日 ← この間ずっと → 所要資金の額(このライン) ⭕ 一度も下回らない 🔴 ここで1回下回ると、基準を満たしません 残高

「常時確保」は、申請時の残高証明1枚では終わりません。申請から許可までのあいだに、もう一度残高を見られます。

いちばん多い落とし方は「一度使ってしまう」です。 車両の頭金を先に払う、保証金を入れる、生活費に回す ── いずれも残高が下がります。 所要資金は「払うためのお金」ではなく「置いておくお金」だと考えるほうが実態に合います。

🔴 内訳と月数は、全国共通ではありません

公示には費目も月数も書かれていません。それは地方運輸局が出している手引の側にあります。ここを取り違えると、他の地域の数字で計算してしまいます。

資料車両費・施設費
北陸信越運輸局の手引令和5年4月3日 改訂1年分(割賦なら頭金+1年分/リースは1年分/賃借料も1年分)
関東運輸局の手引平成27年6月1日6か月分

この2つは食い違っています。関東の手引は2015年のもので、令和元年11月1日の許可基準の見直しより前です。 関東運輸局はいまもこの手引を掲載していますが、関東で申請するなら、必ず最新の公示・様式で月数を確かめてください。 本サイトはどちらが現行かを断定できる資料に当たれていません。

北陸信越運輸局の手引(令和5年4月3日改訂)の費目

いちばん新しい版が取れたのがこの局のものだったので、これを例として載せます。他の局で同じとは限りません。

区分費目計上のしかた
人件費役員報酬/運行管理者給与/整備管理者給与/事務員給与/運転者給与/手当6か月分
賞与賞与月分 × 支給回数 × 1/2
法定福利費健康保険料/厚生年金保険料/労災保険料/雇用保険料(報酬・給与・手当)× 事業主負担率 + 賞与 × 事業主負担率
厚生福利費厚生福利費6か月分
運行費燃料費月間走行キロ ÷ ℓ当たり走行キロ × ℓ当たり単価 × 6か月分
油脂費6か月分
修繕費自家修繕費・部品費/外注修繕費1両月額概算 × 6か月分 × 両数
タイヤ・チューブ費使用本数 × 1本単価
車両費車両購入費取得価格(分割なら頭金 + 1年分の割賦金
リース料1年分
施設費施設の購入・使用料取得価格 または 1年分の賃借料
自動車税/重量税1年分
環境性能割別掲
保険料自賠責保険/任意保険1年分
その他旅費・会議費・通信費 ほか2か月分
登録免許税登録免許税120,000円(許可が出たあとに納付

出典:北陸信越運輸局「一般貨物自動車運送事業経営許可申請書作成の手引き」(令和5年4月3日改訂)。 ⚠ 人件費が6か月分、車両費と施設費と税・保険が1年分、その他が2か月分という組み合わせです。ひとまとめに「6か月分」ではありません。

組み立ててみる

単価はこちらでは置きません。あなたの数字を入れてください。月数も書き換えられます。

所要資金を組み立てる

金額と月数を入れると、合計(=所要資金)と、確保しておく必要のある自己資金を出します。 月数の初期値は北陸信越運輸局の手引(令和5年4月3日改訂)に合わせてあります。 🔴 あなたの管轄局の手引で月数を確かめて、違えば書き換えてください。

6か月分で計上するもの(初期値)

人件費(月額の合計)円 ×か月
法定福利費(月額)円 ×か月
燃料費・油脂費(月額)円 ×か月
修繕費(月額)円 ×か月

1年分で計上するもの(初期値)

車両費(割賦の月額)円 ×か月
施設費(月額の賃借料)円 ×か月
税・保険(1年分の額)

その他

その他経費(月額)円 ×か月
頭金・一括で払うもの

出典:自己資金の考え方は公示「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可及び事業計画変更認可申請等の処理について」1.(8)資金計画。費目と月数は北陸信越運輸局の手引(令和5年4月3日改訂)。

🔴 この計算は、申請書の裏づけにはなりません。提出する内訳は、管轄の運輸支局が配っている様式で作る必要があります。 ここでできるのは「桁を掴む」ことと、自己資金が合計と同額以上必要だと確かめることだけです。

登録免許税は、条文で決まっています

ここは全国共通です。局によって違いません。

許可課税標準税額
一般貨物自動車運送事業の許可(法第3条)許可件数一件につき 120,000円
特定貨物自動車運送事業の許可(法第35条第1項)許可件数一件につき 60,000円

出典:登録免許税法 別表第一(e-Gov の法令データから条文の表を取得して確認)。条文は「一件につき十二万円」「一件につき六万円」と書いています。 納めるのは許可が出たあとで、納付を確認してから許可書が交付されます。

2025年改正で新設される「5年ごとの更新」には、この登録免許税はかかりません。 別表第一が課税対象としているのは法第3条の許可で、更新の規定(新設される第6条の2)は別の条文です。 ⚠ ただし更新制の施行日は、2026年8月時点でまだ政令が出ていません。

保険 ── 事業計画に書く数字

公示の「損害賠償能力」の項です。自賠責だけでは足りません。

自賠責保険(共済)

加入する計画があること。全車両ぶんです。

任意保険

締結等により十分な損害賠償能力を有すること。対人 被害者1名につき無制限/対物 一事故につき200万円以上で計画するよう示している局があります。

危険物を運ぶなら

その輸送に対応する適切な保険への加入も含めて見られます。

出典:公示 1.(10)損害賠償能力/対人・対物の額は北陸信越運輸局の資料。⚠ 金額は局の資料の側にあります。

このページで確かめていないこと

項目状態
自己資金の要件(全額以上・常時確保)公示の本文で確認しました
登録免許税 120,000円/60,000円登録免許税法 別表第一の条文で確認しました
費目と月数北陸信越運輸局(令和5年4月3日改訂)の1局ぶんだけです
関東と北陸信越の食い違い版の差だと考えられますが、どちらが関東の現行かを断定できる資料に当たれていません
他の8局の費目・月数確認していません
対人無制限・対物200万円以上北陸信越の資料の数字です。全国共通かは確認していません

数字は、申請する営業所を管轄する運輸支局・地方運輸局の最新の手引で必ず確かめてください。個別の申請の可否は運輸支局の判断によります。

書籍『一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)が自分でわかる本』の表紙 BOOK / Amazon 販売中

お金の組み立てを、順番どおりに

『一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)が自分でわかる本』では、第3章で所要資金と自己資金を扱っています。 「6か月分の自己資金」を副題に置いたのは、ここでいちばん多くの人が止まるからです。チェックリストは136項目です。

著者:貨物運送手続き実務ノート ── 当サイトの運営者です。サイトと本は同じ人が書いています。

※ 当サイトはAmazonアソシエイト・プログラムの参加者です。上のリンクから購入された場合、当サイトに紹介料が入ります(広告・PR)。