一般貨物実務ノート一般貨物自動車運送事業の許可と実務

許可のあとに続くもの

点呼と記録 ── 毎日続くほうの実務。

許可を取ったあと、事業として毎日回り続けるのがここです。 点呼を行い、記録を残し、決められた期間だけ保存する。 巡回指導で最初に見られるのも、監査で最初に出せと言われるのも、この記録です。

条文は「何を」「いつまで」まで具体的に書いています。曖昧なのは運用のほうだけです。

出典:貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条・第7条・第8条・第9条・第9条の2・第9条の3・第9条の5・第10条(e-Gov 法令検索の条文で確認)

まず、答えから ── 記録の保存期間

「どれを何年とっておくのか」だけ知りたい人は、この表で足ります。1年のものと3年のものが混ざっています。

記録条文保存期間
点呼の記録第7条第5項1年間
業務の記録第8条第1項1年間
運行記録計による記録第9条1年間
運行指示書とその写し第9条の3第4項運行の終了の日から1年間
事故の記録第9条の23年間(運行を管理する営業所において)
運転者等台帳第9条の5第2項・第3項3年間(運転者等でなくなった日から)
指導及び監督の記録第10条第1項・第3項3年間(営業所において)

3年のものは、事故・台帳・指導監督の3つです。日々の記録(点呼・業務・運行記録計・運行指示書)は1年。 台帳は「保存3年」ではなく「その人が運転者等でなくなってから3年」で、起点が違います。

点呼は3種類あります

「業務の前」と「業務の後」、そしてそのどちらも対面等でできないときの「中間」です。

1日の流れと、点呼が入る場所 業務の前に点呼、業務の後に点呼。前後のどちらも対面等でできない業務のときは、途中で少なくとも1回、中間の点呼が入ります。点呼の記録は1年間保存します。 業務の前 点呼(第7条1項) 運行(業務) この間のことを「業務の記録」に残します 業務の後 点呼(第7条2項) 前後のどちらも対面等でできない業務のとき 中間の点呼を、途中で少なくとも1回(第7条3項) 1日の流れ 記録は1年間保存(第7条5項)

出典:貨物自動車運送事業輸送安全規則 第7条。

業務前の点呼(第1項)

報告を求め、確認し、必要な指示を与えます。

① 運転者の酒気帯びの有無
疾病・疲労・睡眠不足その他で安全な運転ができないおそれの有無
日常点検の実施またはその確認(道路運送車両法第47条の2)
④ 特定自動運行保安員には、自動運行装置の設定の状況の確認

業務後の点呼(第2項)

その業務の自動車・道路・運行の状況について報告を求めます。

運転者には酒気帯びの有無の確認。交替した場合は、交替した相手への通告の内容も報告させます。

中間

中間の点呼(第3項)

業務前・業務後のどちらも対面(または国土交通大臣が定める同等の方法)で行えない業務のときに、途中で少なくとも1回

見るのは酒気帯びと、疾病・疲労・睡眠不足の2つ(第1項の一号・二号)です。

アルコール検知器は「営業所ごとに備え、常時有効に保持」です(第4項)。 置いてあるだけでは足りず、目視等での確認に加えて、その運転者が属する営業所に備えられた検知器を用いて行うと条文が書いています。

「電話その他の方法」でよいのは、運行上やむを得ない場合だけです(第1項の括弧書き)。原則は対面、または国土交通大臣が定める同等の方法です。

点呼の記録に、何を書くか

点呼をしたら、運転者等ごとに点呼を行った旨・報告・確認・指示の内容に加えて、次の5つを記録します(第7条第5項)。

記録する事項
点呼を行った者、および点呼を受けた運転者等の氏名
その運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車の自動車登録番号または車両番号その他の識別できる表示
点呼の日時
点呼の方法
その他必要な事項

「四 点呼の方法」があるので、対面か・同等の方法か・電話かを書き分けることになります。電話が続いていれば、そこが見られます。

🔴 トンの数字が2つあります。取り違えやすいところ

同じ規則の中に、違う基準の重量が出てきます。どちらも「大きいトラックの話」ですが、対象が違います。

何の話か条文基準
運行記録計で記録する義務第9条第1号車両総重量 7トン以上 または 最大積載量 4トン以上
業務の記録に貨物の積載状況を書く義務第8条第1項第6号車両総重量 8トン以上 または 最大積載量 5トン以上

出典:貨物自動車運送事業輸送安全規則 第8条・第9条。7トン/4トンが運行記録計、8トン/5トンが積載状況です。 運行記録計は、上の車両をけん引するけん引自動車と、特別積合せの運行系統に配置する事業用自動車も対象になります(第9条第2号・第3号)。

記録する中身は、瞬間速度・運行距離・運行時間の3つです(第9条)。そして1年間保存

業務の記録は、運行記録計で代えることもできます(第8条第2項)。ただし運行記録計に記録されない事項は、運転者等ごとに付記させる必要があります。「機械に任せて終わり」にはなりません。

業務の記録 ── 待機と荷役が入っています

第8条は10号まであります。運転の記録だけではなく、荷主の都合で待たされた時間と、荷役作業の時間が入っているのが特徴です。

基本の記録

運転者等の氏名/車両の識別表示/業務の開始と終了の地点・日時・従事した距離/主な経過地点/交替した地点と日時/休憩または睡眠をした地点と日時。

🔴 荷主都合で待機したとき(第7号)

集貨地点等/荷主から指定された到着日時/実際に到着した日時/荷役作業の開始と終了の日時/附帯業務の開始と終了の日時/出発した日時

つまり「何時に着いて、何時まで待って、何時に出たか」を残すということです。

荷役作業等を実施したとき(第8号)

集貨地点等/荷役作業等の開始と終了の日時/内容荷主の確認が得られたか(得られなければ、その旨)。

契約書に荷役作業等のすべてが明記されている場合は、要した時間が1時間以上のときに限られます。

事故・異常があったとき(第9号)

交通事故、自動車事故報告規則第2条の事故、または著しい運行の遅延その他の異常な状態が発生した場合は、その概要と原因

出典:第8条第1項。待機時間の記録は、荷主に是正を求めるときの資料にもなります。書いていなければ、後から主張の根拠がありません。

特別な指導と適性診断は、3種類の人に

通常の指導監督(第10条第1項・記録は3年保存)とは別に、次の運転者には特別な指導適性診断が要ります(第10条第2項)。

事故を引き起こした者

死者または負傷者が生じた事故を引き起こした運転者。負傷の範囲は自動車損害賠償保障法施行令第5条の第2号・第3号・第4号に掲げる傷害です。

新たに雇い入れた運転者

運転者として新たに雇い入れた者。採用のたびに発生します。

高齢者

65歳以上の者。条文が「六十五才以上の者をいう」と定義しています。

出典:第10条第2項。適性診断は国土交通大臣の認定を受けたものを受けさせます(第12条の3第1項の認定)。 通常の指導監督の記録は営業所で3年間保存です(第10条第1項)。

非常信号用具と消火器の取扱いの指導も、条文に書かれています(第10条第4項)。忘れられやすい項目です。

また輸送の安全に関する基本的な方針の策定その他の措置が第5項にあります。「方針を作る」ところまでが義務です。

⚠ 用語が変わっています

古い解説を読むときに、いちばん混乱するところです。いまの条文はこう書いています。

よく見かける言い方いまの条文の見出し条文
乗務等の記録業務の記録第8条
乗務員台帳運転者等台帳第9条の5
乗務前点呼・乗務後点呼条文は「運行の業務に従事しようとする運転者等」「運行の業務を終了した運転者等」という書き方第7条

「乗務員等」という語は、いまも第3条第3項で定義されて使われています(運転者・特定自動運行保安員・運行の業務の補助に従事する従業員)。 消えたのではなく、指す範囲が整理されました。本サイトは条文の見出しに合わせています。

その手前にある、過労運転の防止

点呼と記録は「確かめて残す」仕組みですが、その前提になるのが第3条です。

必要な員数の運転者を常時選任

事業計画に従って業務を行うのに必要な人数を、常時選任しておくこと(第1項)。

🔴 選任できない人がいます

日々雇い入れられる者/2か月以内の期間を定めて使用される者/試みの使用期間中の者は選任できません(第2項)。
⚠ ただし試用期間中でも14日を超えて引き続き使用されるに至った者は除かれます=選任できます。

休憩・睡眠施設の整備と管理

乗務員等が有効に利用できるように整備し、適切に管理し、保守すること(第3項)。作って終わりではありません。

勤務時間・乗務時間

国土交通大臣が告示で定める基準に従って定め、運転者に遵守させること(第4項)。

交替運転者の配置

長距離運転または夜間の運転で、疲労等により安全な運転を継続できないおそれがあるときは、あらかじめ交替運転者を配置しておくこと(第7項)。

健康状態の把握

把握に努め、疾病・疲労・睡眠不足その他の理由で安全に業務を遂行できないおそれのある乗務員等を業務に従事させてはならない(第6項)。

出典:貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条。

このページで確かめていないこと

項目状態
点呼・記録・保存期間の条文e-Gov 法令検索の条文で確認しました
「国土交通大臣が定める方法」の中身告示です。本サイトはまだ当たれていません(IT点呼・遠隔点呼などの具体的な要件はここにあります)
勤務時間・乗務時間の基準告示(改善基準告示)です。数字は書いていません
特別な指導の時間数・内容告示です。確認していません
アルコール検知器の要件「国土交通大臣が告示で定めるもの」。機種の要件は確認していません

条文が「国土交通大臣が定める」「告示で定める」と書いている箇所は、数字が条文の外にあります。本サイトはそこを埋めていません。実務では告示まで確かめてください。

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許可のあとに続く義務を、通して

『一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)が自分でわかる本』の第7章は、この点呼と記録、そして巡回指導までを扱っています。 取るところで終わらせずに、続けるところまで書いたのは、投資判断にはそちらの分量のほうが効くからです。チェックリストは136項目です。

著者:貨物運送手続き実務ノート ── 当サイトの運営者です。サイトと本は同じ人が書いています。

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